一年余りのヨーロッパでのアルバイト放浪生活に終止符を打つつもりで、北欧フィンランドにやって来た。当初の夢を果たせずにこのまま日本に帰るのも心残りだったが、どこかで終りにしなければならないという気持ちもあって、たどりついた最終地ヘルシンキの街だった。
運命は自分の意志とは無関係に進んでゆくものだ。それとも、自分の気持ちのどこかに帰国を拒否する気持ちが働き続けていたからだろうか・・・盗難にあったオレは無一文になりヘルシンキの街に放り出され、否応なくここで暮らすはめとなった。
好意もあれば悪意もあり、友情もあれば裏切りもある。どこの世界に行ったって同じ事だろうが、若かったオレは異国での非日常的な生活の中で、ひとつの世界をくぐり抜ける経験をする事となったのだ。これがオレにとっての成人への儀式だったのかも知れない。
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